昨年東京を訪れた際に、以前より興味のあった早稲田大学国際文学館、通称「村上春樹ライブラリー」を見学してきました。
蔵書物だけでも一瞬にして村上ワールドへいざなわれる空間なのですが、さらに非日常の世界へと導くしかけがこの建物にはありました。
既存の校舎を改修したという真っ白な外観。
今にも波打ちをはじめそうな“うねり”を持ったダイナミックな木の庇。
それだけでもう内部への期待度MAXで、心がワクワクしてきます。
建物内部へ入るとまず目に入ってくるのはトンネルのようなアーチと階段からなる「階段本棚」
村上春樹さんのデビューから最新までの作品はもちろん、レアな初版板や世界のさまざまな言語に翻訳されその装丁も国ごとに異なる作品などがずらりと並んだ様子は圧巻です。
階段に腰掛け、書棚に並んだ作品を手に取り眺めながら時を過ごすことが出来るなんてなんとも素敵
もしこんな時間を日常的に送れるとしたら…と、妄想を広げながらも階段本棚を囲むように配置されたギャラリーラウンジやオーディオルームといった空間を見学。
随所に椅子が配置されているので、気になる本を手に取りちょいちょい休憩。
ぐるりと回遊しながら、最後は階段本棚から繋がる地下へ。
このトンネルのような装飾は村上作品特有の、異世界に繋がる様子を表現しているそうですよ。
ちなみにこのリノベーションを手掛けたのは隈健吾さんです。
地下1階に降り、カフェ「橙子猫 – Orange Cat -(オレンジキャット)」でひと休み。
学生さん達によって運営されているというこのカフェ。
おしゃれな家具でレイアウトされた店内で自分の居心地の良い場所を見つけコーヒーをいただきました。
ハンドドリップで丁寧に淹れられたコーヒーは香りも高くじつに美味しいものでした。
このコーヒー豆は村上夫妻の好みの風味にブレンドされており、そのテーマは『共振』。
「響きや振動が連動して伝わっていく様をイメージし“発散的なのに調和しながら広がっていく”不思議な一体感を感じさせるような味わいを表現しました。」
…との解説文に「ほぇ~」との言葉しか出てこなかった私には、文学的要素皆無!
カフェでコーヒーとドーナツをいただきながら、キャンパス内を行き交う若者の姿を眺めていると、これからもこの子たちが自由に安心して生きていくことのできる世の中であって欲しい、そういった感情が溢れてきました。
文学に触れる経験は貴重で、いくつになっても心に成長を与えてくれる存在が小説だと私は思います。
このライブラリーを訪れ、村上春樹さんという人物の世界観を知ると同時に、
そこに居心地の良い空間が加わる事で、心って本当に豊かさを得られるのだと実感したひとときでした。
(とは言え、眠れない夜は本を読み始めると秒で眠りに落ちる名手、梅野でした)